OUR PROJECT

宇宙線研究室では、宇宙放射線の測定を軸に、観測と開発の両面で研究プロジェクトが進んでいます。2023年に打ち上がった世界最高性能を誇るX線衛星 XRISM を中心にしたX線天文学、大気球を用いてガンマ線天文学を切り拓く SMILE プロジェクト、銀河宇宙線を用いて月の水資源を探す MoMoTarO 計画や、身近な雷雲や雷で起きる高エネルギー大気物理を研究する雷雲プロジェクトなどがあります。宇宙の果てから身近な自然現象まで、さまざまな高エネルギー自然現象の謎に迫っています。各プロジェクトを紹介しています。

X線天文学X-ray Astronomy

元素の起源と銀河中心の歴史

星が一生の最後に起こす壮絶な爆発を超新星爆発と呼び、その後に残るのが超新星残骸です。超新星残骸では、地球に降り注ぐ宇宙線の起源である粒子加速が起きていたり、星の爆発までに生成された元素の構成を観測することができます。当研究室では、元素や宇宙線の起源に迫る研究を進めています。さらに、私たちの天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの過去の活動性や、銀河の高温プラズマの謎にも XRISM 衛星などを駆使して挑戦しています。

宇宙物理の実験室・中性子星

宇宙で最も高密度な天体「中性子星」は、強磁場、強重力、高速回転など、地上では実現不可能な極限的な物理現象を解明する理想的な実験室です。電波からガンマ線まで様々な波長帯で観測されており、当研究室ではとくにX線帯域で明るく輝く降着型のX線パルサーや超強磁場のマグネターに注目し、XRISM衛星やNICER望遠鏡の観測データを用いて、中性子星の謎に挑んでいます。物理学と天文学の両方の醍醐味を味わえます。

恒星フレアと
系外惑星・惑星円盤

恒星フレアは、星の磁場に蓄えられたエネルギーが突発的な解放される増光現象です。近年、恒星でのフレアによるX線・紫外線放射やフレアに伴うコロナ質量放出 (CME) が系外惑星の居住可能性に与える影響が注目されています。私たちはX線や可視光での多波長観測を軸に、原始星やRS CVn型星などの幅広いタイプの恒星でのフレアとCMEの物理的メカニズムを解明し、惑星形成・環境との関係を探究しています。将来は、宇宙線や恒星フレアなどの高エネルギー現象と文明・生命の境界にも挑戦します。

宇宙衛星にむけた
検出器開発

「新しい発見は、新しい観測装置から。」これが私達のモットーです。新しい観測装置=X線衛星とX線検出器は、どこにも売っていません。借り物ではNo.1にはなれません。だから自分たちで作るのです。私達はこれまで、X線衛星「すざく」「クリズム」とその搭載X線CCDカメラを開発し、多くの発見をしてきました。そして今、さらなる発見を目指し、私達は新型のX線SOIカメラと次世代X線衛星の開発を進めています。

ガンマ線天文学Gamma-ray Astronomy

SMILEプロジェクト

MeVガンマ線領域はブラックホール・活動銀河核・宇宙線起源などの理解にかかせない非常に重要な領域です。更に、原子力産業・核医学など社会と大きな関わりを持ち、この領域における計測技術の進歩が急がれています。MeVガンマ線を観測する新しい手段として、ガス飛跡検出器とシンチレーター検出器を組み合わせ、コンプトン散乱を利用したMeVガンマ線カメラを開発し、飛翔体を用いて宇宙の観測を進めています。

宇宙線学際研究Cosmic-ray Science

シチズンサイエンス・
雷雲プロジェクト

雷雲の電場によって宇宙線空気シャワーの電子が加速され、ガンマ線が地上に降り注ぐ現象が見つかってきました。これは未解明の雷発生のメカニズムに関連するかもしれません。さらに私たちは、雷の瞬間の強烈なガンマ線が原子核反応を起こすことも発見しました。雷雲プロジェクトでは、シチズンサイエンスも活用し、冬季の日本海沿岸の約70地点に放射線検出器を展開して、雷雲や雷での粒子加速、雷トリガーの謎、宇宙線空気シャワーなど、高エネルギー大気物理学の新分野を開拓しています。

月の水資源探査
MoMoTarO

新しく立ち上がったMoon Moisture Targeting Observatory (MoMoTarO)は、中性子とガンマ線の放射線測定を軸とした多分野連携プロジェクトです。銀河宇宙線が月面に衝突して出てくる中性子により月面探査車に搭載した水資源探査、月周回衛星を用いた中性子寿命の測定、月と地球の距離差を利用したガンマ線バーストの到来方向の精密測定を目標として、CubeSatサイズの線検出器を製作しています。2026年には、国際宇宙ステーションにて宇宙実証を行い、月への進出を計画しています。

Top