種族分布の比較
Update: 2000年05月12日
Yokogawa et al. (2000) と
Sakano (2000, Ph.D. thesis, Kyoto Univ.)
によって、
SMC、銀河系全体、銀河系中心におけるX線天体の種族分布が以下のように明らかになった。
| HMXB
| LMXB
| SNR
| Crab-likeパルサー
|
SMC
| 30
| 0
| 14
| 0*
|
銀河系中心
| 3
| 8
|
| 0
|
銀河系全体
| 70
| 100
| 220
| 6
|
*: 87msパルサー候補は入れていない。
- HMXBとLMXBの個数比に際だった違いが見られる。
HMXBは大質量星が超新星爆発をした直後に誕生し、
LMXBは非常に古い中性子星(〜1億歳?)から誕生することを考えると、
HMXB/LMXBの比は星生成活動の古さを表す指標となりうる。
すなわち、HMXB/LMXB比の高いSMCでは過去に比べて最近(数千万年前)の星生成活動が活発であり、比の低い銀河系や銀河系中心ではむしろ最近は星があまり生まれていないということが示唆される。
- SMCはHMXBの個数そのものが極めて多い
比較のため、
各種族の個数をそれぞれの銀河・領域の質量比
(SMC:銀河系:銀河系中心=1:100:1)
で規格化してみる。
するとSMCのHMXBの個数は、銀河系に直すと3000個相当になる。
いかなるselection effectを考えても、
銀河系内の2930個のHMXBを見逃しているとは考えにくいため、
明らかにSMCにはHMXBが多いと言える。
このことから、SMCでは数千万年前に大スターバーストがあったのではないか?と推測できる。
SMCはLMCとともに銀河系のまわりを公転しており、互いに潮汐作用を及ぼし合っている。軌道の数値シミュレーションによると、何度か大接近する時期があったとされている。
数千万年前にもこの大接近が起こり、最も小さいSMCが大擾乱を受け、爆発的な星生成につながったのかもしれない。
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