Hardness Ratioによる種族分類

Update: 2000年05月12日

Hardness Ratio (HR)

種族分類

98ersはあすかの観測データのうち入手可能なもの全て(アーカイブ含む)を用い、 S/N>5 で天体を検出し、 スペクトル解析、時間解析を系統的に行った。 また、必要に応じてROSAT、Einstein、電波のカタログやアーカイブデータを取り寄せ、照合や解析を行った。 これにより、検出された天体を以下のように分類した。

X-ray HR diagram

HMXBパルサー、Crab-likeパルサー、ブラックホール、thermal SNRのHRとobserved luminosity (吸収は補正しない;距離はLMC=50kpc、SMC=60kpcを仮定) をプロットしたのが以下の図。 ちなみに X-ray HR diagram という名称はあまり評判がよくなく(単なる言葉遊びですからね)、 98ersとしても特に気に入っているわけではないので、よい呼び名を募集中です。

X-ray HR diagram
filled/open symbolはそれぞれLMC、SMCの天体を示す。
[ :thermal SNR :HMXBパルサー :ブラックホール ×:Crab-likeパルサー ]
HRのエラーは、1e35 erg/s辺りで±0.1程度、1e36 erg/s以上ではマークより小さい。

上図で帯状の領域に示したように、 明らかにthermal SNRとHMXBパルサーが分離できている。 またサンプル数は少ないが、 Crab-likeパルサーとブラックホールはこれらとは異なる中間HR領域を占めている。

このように「見かけの色」で種族が分類できる様子は、 マゼラン雲のX線カラー画像を見ると非常に明らかに分かる。

暗い天体の種族の推定

X-ray HR diagramにその他の種族を一緒にプロットしてみると下図のようになる。 LMCの天体の個数が妙に少ないのは、まだ解析が終わっていないものがあるためである。

X-ray HR diagram (all)
filled/open symbolはそれぞれLMC、SMCの天体を示す。
[ :thermal SNR :HMXBパルサー :ブラックホール ×:Crab-likeパルサー ]
[ :HMXB :その他のSNR :Unidentified ]
下の3種族のHRのエラーはやや大きい(±0.2程度)。

新たに加わった天体は概して暗く、十分な解析ができないため、 仮にパルスや輝線が出ていても検出できない可能性がある。 しかし上で述べたHRによる分類法(2色の帯)を暗い方にまで延長し、 水色の帯に入っている天体はHMXBパルサー候補ピンク色の帯に入っている天体はthermal SNR候補・・・ などと推測することができる。 この推測は、一つ一つの天体については間違いがあるかもしれないが、 統計的議論をする際には強力な武器になる。

特に注目すべき天体を挙げておく。


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