鶴 剛: 講義/2005年度「高エネルギー天文学」
はじめに
私が学生時代に勉強したことを中心に、高エネルギー天文学を志す学生に、「これはどうしても知っておいて欲しい」と考えている事柄を説明して行きます。
かの林忠四郎先生は「宇宙を素過程で理解する」というのを大事にされていたとお 聞きしています。私もそれは大賛成(私如きがおこがましいですが)。ということで、出来るだけ数式を使って理解することを目指します。と、いっても、数式を「解く」のは数学であって、物理学者の仕事ではありません(断言)。ましてや私は観測屋ですし。そこで、井上一先生のおっしゃった「心を理解する」ということを大切にしながら講義をしたいと思っています。
宇宙物理は本当に多岐多様に渡ります。ですから、それを一本の筋を通した形で講義を行うのは容易ではありません。人によって色々なスタイルがあると思います。他の波長に比べてX線では熱的、非熱的、原子、原子核輝線など物理に直結する数多くの輻射素過程が登場します。そこでここでは各輻射素過程を中心軸にして説明し、それに関連する宇宙物理を講義するスタイルにしたいと思います。しかし宇宙物理も全貌を網羅するように注意を払い(たいと思い)ますので、講義を全部聞くことで一応の網羅した知識を得ることができる予定です。
講義録(時々アップデートしています)
HighEnergyAstro_v2005_2.ps.gz(56MB)
HighEnergyAstro_v2005_2.pdf(80MB)
レポート
- レポートで合否の単位を付けます。単位は基本的にレポートを出していただければ合格を差し上げます。
- レポートの〆切は2/18。提出場所は物理教室239号室の前にある箱または封筒。
- 受教簿の関係で、それ以前に単位が必要な方は、レポートを2/18までに出してもらうという条件で、合格の単位を出します。
- レポートの内容
- 広い意味で高エネルギー天文学に関係するテーマを自分で見つけて、レポートする。
- 講義録にあるものをそのまま丸写しで済むものは除外。講義録の内容を発展させるものはOK。
- 個々の天体の観測結果ではなく、天体に共通する素過程(輻射、力学など分野は問わない)を強く希望する。
- 現在行っている、あるいは今後行う自分の研究に関係する事柄が望ましい。
- 昨年までは、無条件に単位を差し上げておりましたし、深く考えず、良い機会と考えて、日頃勉強しなければならないと思っていたものにしてもらえると良いですね。
- 良いレポートは、来年度からの授業のネタにさせて頂く事もあります。ご了承を。
- 参考:レポートの例
- Synchrotron Self-Compton
- 太陽風に関するParker Model (Parket 1965)
- Charege Exchangeによる輻射スペクトル
- 光電離プラズマからの輻射スペクトル
- パルサーの回転で作られる電磁場(Goldreich, Julian 1969)
- King解
- Cooling Flow
- Modified Black Body
- 相対論的電子および陽子が冷たい物質にぶつかったときのエネルギー損失過程と輻射過程
- その他...
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