鶴 剛 / X線天文 / ブログ
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2014
FEE2014という研究会に参加してきました.FEE = Front End Electronics の意味で,センサーから出てくる生の電気信号をまず最初に受けて処理をする電子回路のことです.センサーが出す信号は微弱なものなので,役割としては(1)信号を増幅することが,まず第一です.さらに,(2)後段での処理を行うための前段階としての信号処理も行います.比例計数管を例に挙げると,(1)は電荷有感アンプがそれに当たり,(2)は単純な測定計ならばない場合も多いのですが,同時計測や検出時刻の決定を行う場合には,(2)入射タイミングをデジタルタイミング信号で出したりします.
私のSOIPIX (XRPIX)の場合では,実はこの両者は一体で,センサー=X線を検出する高比抵抗シリコン,電子回路=低比抵抗部のCMOS回路,ということになります.
FEEの最後のEは「回路」なので,研究会のテーマは,検出器の性能を発揮させるための回路,の研究会と解釈できます.私の場合,回路は検出器の一部,必要なものと,というスタンスで,「回路自身」を研究している訳ではないので,参加する直前はどんな話にしたら良いのか少々ナーバスになっていました.例えば,低比抵抗部のCMOS回路の細かい話をすべきなのか....ちょっとそれには時間的に厳しく,出来そうにありません.そこで,いつもの検出器全体の話をすることにしました.でもよく考えると,センサーと回路が一体になったSOIPIXの良さや,逆に難しさ,をうまく話に盛り込めれば聴衆に楽しんでもらえるかも知れません.実際,一体になっているからこそ,何だって出来てしまう,という良さもあるものの,一体のためにお互いが電気的に干渉してしまうという問題も感じていました.
そこで,回路のゲインを決めてしまっているのが,センサー部での寄生容量であり,それを解決しようとすると,今度はセンサー部の性能が変わってしまう,というようなことを話の中に盛り込みました.また,参加者リストから参加者のほとんどは,本当に検出器や回路を専門にやっている人だと分かっていたので,どうしてこの検出器が必要なのかということを,サイエンスから既存の検出器の限界をロジカルに説明するように心がけました.
その結果,なかなか反応は良く,後から的確な質問もたくさんおらい,「非常に良い講演でした」というお褒めの言葉も頂きました.いつになく時差ぼけが厳しい研究会でしたが,なかなか有意義でした.次は6月のSPIEです.ここが今年の1つの山場の研究会.私達の検出器の認知度を上げるために頑張ります.
FEE2014
2014/05/23
FEE2014の会場だったアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)では,なんと車のエンジンの研究もしているのでした.「車」→「燃費」→「省エネルギー」→「エネルギー省」 の繋がりのようです.