鶴 剛 / X線天文 / ブログ
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2014
新年度が始まり,あらためて今年度は勝負の年のように思っております.毎年そう言っているんじゃないかって,言われると,敢えて否定はしませんが,いくつか違う要素があります.
◯ASTRO-Hの総合試験
2015年打ち上げに向けた秒読み,私たち京大の担当するCCDカメラ(SXI)はついに実際にフライトするFM品が完成しました.NeXT衛星と言って,考え始めたのが2000年以前ですからもう15年以上です.15年の間にはASTRO-E打ち上げ失敗,ASTRO-E2=「すざく」として再生し,これも私たち京大の作ったCCDカメラが主検出器として活躍しました.でも,その横でXISのCCDを凌駕する性能を持つ最新鋭のCCDを開発を続けてきました.それが形になり宇宙に飛び立つ準備が整うという事です.2014年度は,ASTRO-H衛星を全体を組み立て,衛星全体で問題ないかをチェックする年です. 一度宇宙に上げてしまうと二度と修理は出来ません. 衛星を成功させるには,あらゆることを想定し,試験を行い,問題を出し尽くす事です.気を引き締めていきます.
◯ポストASTRO-Hをに向けた新型撮像検出器SOIPIXの開発
7年前からCCDとは原理の異なる新型の撮像分光器を開発しています.何度かのブレイクスルーがありましたが,昨年は特に大きな性能改善に成功をしました.読み出しノイズが約半分になりました.正直に言えば,これまでは「本当に物になるのだろうか?」「物になるといいな」という希望でしたが,今や「必ず物になる」という確信になり,「物にしてみせる」という強い意志を持てるようになりました.もちろん,現在も色々課題があるのですが,基本的にどれも乗り越えられるだろうと考えています.今年度の最大の目標は,大型の素子(18mm□)を開発することです.
◯そして「すざく」を使った宇宙観測
もちろん,現在フライトしている「すざく」を使った観測も進めています.一昨年にスタートしたキープロジェクト「銀河リッジの中性鉄輝線の解明」の全観測が終了しました(この審査のことは以前このブログで紹介しました).1Msec=25日間もの観測時間を頂きました.その初期成果は2月の国際会議「Suzaku-MAXI2014」で発表をしました.予想通り,面白い結果が出つつあり,わくわくしております.
◯研究室の体制
2011年に私は教授に着任しました.今年は3年目です.最初は全くの一人でしたが,現在は助教3名,PD 1名というかなり充実した体制を組む事ができました.また.昨年度夏から新学術領域「3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開」もスタートし,研究資金面も不安が無くなりました.これで十分ということは常に無いのですが,やりたい事ができる状況を作る事ができました.仲間と一緒に,良い研究,良い教育をしていきたいと思っております.
2014年度初め
2014/04/09
京大のクリーンルームで試験中のASTRO-H搭載CCDカメラSXI.サブシステム噛み合わせ試験という試験を行っています.奥に見える金色の物体が「SXI-S」です.手前はそれを駆動・読み出すためのエレクトロニクスです.