γ線バーストの研究は残光現象の発見以来、われわれの予想を裏切るような新しい発見が相次ぎ大きな進展を続けている。2003年には、γ線バーストはある種の超新星爆発と関連する明瞭な証拠が得られ、大きな衝撃を巻き起こしたと同時に、数年来の疑問に明確な形で解答をあたえた。X線観測の分野では、このGRB-SN相関に匹敵する未解明の課題が残されている。それは、10例弱のX線残光でFe, Si, S起源と考えられる狭い輝線構造が報告されていることである。これは、1997-1998年における、ASCAとBeppoSAXの先駆的なFe輝線の発見に端を発し、Chandra, Newtonによる、Si等のより軽い元素からのK-alpha線の検出へと発展したものである。この観測が正しいとすると、GRB発生天体のごく近傍に多量のFe等のイオンが存在することになる。X線の分光観測はGRB近傍での物質組成について直接的な情報をもたらすことになるが、現在の標準的なGRBモデルでは、このような多量の重元素を含む物理環境を説明することは困難である。GRB-SN相関がそうであったように、新しいアプローチを切り開く糸口となりえるものである。しかしながら、過去の観測における輝線の有意性は3σ程度の低いものであり、統計的な解析方法にも疑問があがっている。Astro-E2の高分光能力によって、このような輝線構造の揺るぎない検出が可能であるとわれわれは期待している。
一方HETE-2衛星は、GRB本体(プロンプト放射)のX線分光により、より軟らかいスペクトルを持つバースト、すなわちX線フラッシュ・X線過剰GRBとよばれる現象を系統的に観測し続けている。これはGRBのジェット構造等について重要な情報をもらたすものとして、現在多くの観測者・理論家たちの注目をあつめている。また、HETE-2を発展させた形で開発された、Swift衛星が2004年に打ち上がり、精力的にGRBの観測を開始したところである。
本講演では、GRB残光のX線輝線とAstro-E2の観測への期待を主軸とし、HETE-2やSwiftでの分光観測の成果も含めて、γ線バーストおよびそのX線残光における分光観測の成果と展望を報告する。