銀河団進化を決定づける重要な要素は、ゆらぎの成長およびサブハローの衝突合体といえる。現在の標準宇宙モデルでは、密度ゆらぎの成長は低赤方偏移になるほど抑制されるため、激しい衝突の様子をとらえるには、遠方銀河団の観測が重要となる。その宇宙論に対する重要性にもかかわらず、遠方のマージング銀河団の詳しい物理はまだ明らかになっていない。最近、いくつかの銀河団中で温度が20keVを超えるような高温ガスの塊が見つかってきており、数千km/sを超える速度での衝突に伴うショック加熱が示唆されている。よって、銀河団進化の過程において、このような高温ガスが普遍的に作られている可能性がある。Astro-E2の高分解能分光により、鉄輝線のエネルギーシフトやプロファイルから、衝突直後のガスの運動状態を初めて実証できる。こればかりでなく、衝突直後のプラズマの(非)平衡状態や非熱的ガスの存在についても直接検証を行う。以上より、ガス加熱過程について本質的な情報を引き出し、多波長データも合わせながら、観測から最も完全な遠方銀河団のモデル構築を目指す。