30年来のなぞであったULXは、「あすか」衛星以降のX線分光観測によって、そのX線連続スペクトルの研究から、「エディントン限界光度近くで輝く数10−100太陽質量のブラックホール」というシナリオが確立しつつある。連続スペクトルの観測とは独立に、銀河系内X線連星の観測からは多くの吸収線構造が観測されている。吸収線は放射の異方性を反映するものであり、実際いくつかの天体からは質量降着にも匹敵する巨大な質量放出が示唆されている。XRSによる超高エネルギー分解能による観測は、吸収線観測をULXにおいてはじめて可能にするものであり、物質の重力エネルギー解放を放射と放出の両面から理解できるようになる。本講演では、これまでの研究に寄るULXの理解の到達をふまえ、XRSによる吸収線探査によって可能になる、臨界降着におけるブラックホールの放射と放出のエネルギーバランスを議論したい。