超大質量星の最終進化段階にあるエータカリーナは、その濃いガスの中心に大質量連星系を蔵している事が周期的光度変動より示唆されている。観測される高光度硬X線は、その両者からの星風の衝突加熱プラズマによるものとされ、5年半毎に繰り返される極大期とその直後の極小期は、長楕円軌道上の連星が近星点を迎え、後にプラズマが主星後方に隠される現象と解釈されている。2003年6月はチャンドラ・XMMニュートン2大X線望遠鏡が迎える初のX線極大極小期であり、大規模な観測キャンペーンが行われた。チャンドラによる高分散分光では、珪素や硫黄のラインが極大期に青方偏移する現象がみられた。これは星風衝突モデルによる加熱プラズマの衝撃面後方への高速流とつじつまが合う。一方鉄K輝線では、同程度の青方超過は見られたものの、それ以上に赤側の超過が目立ち、ライン全体では赤側に偏移するという全く逆の結果が得られた。この現象はCCD分光のみ可能であった極小期に更に激しく見られ、鉄K輝線は極小期付近でその形状を大きく変化させた。これは星風衝突モデルの枠組みでは説明不可能であり、1.最高温度プラズマの強力な赤方ジェット、2.近星点付近でプラズマの電離非平衡度の加速、等を考える必要がある。チャンドラグレーティングの限られた分散分光・有効面積能力では、ラインの構造までは分解できず、Astro-E2 XRSでの観測が問題解決に必須とであると思われる。連星系はAstro-E2の観測時に遠地点に近いため、形状の変化は比較的小さいと予想されるが、吸収構造等の影響も少ないことから、逆にラインの構造を調べる格好の機会になるかもしれない。