白色矮星の大爆発で起こるIa型超新星は、100億光年にわたる宇宙の距離の測定に利用される「ものさし」であるとともに、鉄などの重元素を合成する宇宙の「核融合炉」とも呼べる天体です。NASAゴダードスペースフライトセンターの山口弘悦研究員が率いる国際研究チームは、X線天文衛星「すざく」の観測によって、銀河系内のIa型超新星残骸『3C 397』のX線スペクトルから、鉄よりさらに重い元素であるニッケルが放つ輝線の検出に成功しました。測定されたニッケルの量は、これまでに観測された他のどの超新星や超新星残骸をも凌ぐ膨大なものでした。多量のニッケルは、超新星爆発の際に陽子と電子が合体する「電子捕獲反応」を経て作られます。電子捕獲は、極限まで成長した重い白色矮星でしか起こらない、超新星核融合の最終プロセスです。Ia型超新星で電子捕獲が起こることは、日本の理論天文学者を中心に古くから提唱されていましたが、今回、その確かな観測証拠を「すざく」衛星が初めてつきとめたのです。
図1:超新星残骸 『3C 397』のX線画像
(可視光・赤外線の背景画像との合成)
Credit: X-ray: NASA/Suzaku/Hiroya Yamaguchi et al. and NASA/CXC/Univ. of Manitoba/Samar Safi-Harb et al.; optical: DSS; infrared: NASA/JPL-Caltech
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