天の川中心:火の玉の正体、多重超新星残骸、激動の過去をキャッチ
2006年12月6日

小山勝二 (京都大学)
前田良知 (宇宙研)

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日本の天文衛星は銀河中心とその周辺から半径500光年ほどに広がったX線放射と大質量ブラックホールの300年前の爆発の証拠を発見した。「すざく」は高い分光能力でもって、(1)広がったX線放射が大規模な超高温プラズマ球(温度は7000万度)である確かな証拠を得た、 (2)多数の超新星残骸候補を発見した、 そして(3)大質量ブラックホールが300年前に大爆発した瞬間をキャッチした。

「すざく」の高い分光能力は広がったX線放射が温度7000万度の大規模な超高温プラズマ球であることを疑う余地ない精度で決定した。また「すざく」は硫黄と鉄の特性X線の銀河中心付近の分布観測に初めて成功した(図1)。多くの超新星残骸は大量の重元素を含むので、これは予想もしなかった数の若い超新星残骸の発見につながった。このことは未発見の超新星残骸がまだ多数存在することを意味する。それらが相互に影響、重なりあって大規模な超高温プラズマ球が形成されたと考えられる。

図1:銀河中心付近500×100光年の高電離硫黄(左)と鉄(右)の特性X線分布。所々にある赤、黄色の塊(ピンクの丸)が新たに発見された超新星残骸

中性の鉄は低温だから通常ではX線を出さない。しかし、特殊な条件下、外部から強いX線に照射されると6.4 keVの輝線を放射する。「すざく」はこの6.4 keVの輝線の銀河中心での分布撮像に初めて成功し(図2右)、広範囲にわたって低温の分子雲が銀河中心大質量ブラックホールの過去の強いX線をうけ、現在輝いていることを明らかにした。とりわけ300光年離れたSgr B分子雲では1994年の「あすか」観測で1個の塊が10年後の「すざく」観測で2個検出されている。これは300年前に突然、大規模な爆発がおこり、そのX線前線が、「あすか」観測時(1994年)に一つの分子雲に、わずか10年間後(「すざく」観測時)にもう一つの分子雲に到達したものである。銀河中心大質量ブラックホールの大爆発の瞬間を初めて検出したと言える。

「あすか」1994年 「すざく」2005年
図2:右図は銀河中心付近500×100光年の中性鉄6.4keV X線の分布。所々にある赤、黄色の塊が銀河中心の過去のX線で照らされた低温分子雲である(銀河中心は現在は暗い)。このうち約半数は新発見である。左図はSgr B分子雲の1994年の姿、一つの塊が2005年には2つに分裂(黄の矢印)した(図中央)。
[左図「あすか」1994年][左図「すざく」2005年][説明入りの右図中性鉄6.4keV X線の分布]


三色図:青:中性鉄6.4keV輝線、緑:高電離硫黄特性X線、赤: 高電離鉄特性X線


[プレゼンテーション用pdfファイル][プレゼンテーション用pptファイル(すざく衛星の説明を含む)]


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