2002年
最初の原理検証機です。
μ-PICのみのTime Projection Chamberとアンガー型NaIシンチレータを組み合わせた
電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)です。
2002年冬に初めてガンマ線イメージの取得に成功しました。
これはガス検出器を用いて電子飛跡を取得する方法としては、世界初の結果になります。
A. Takeda+, IEEE TNS, 51 (2004), 2140
A. Takada+, NIM A, 546 (2005), 258
2004年
ガス飛跡検出器に前段増幅器としてキャピラリープレートを導入しました。
これにより安定して高ガス増幅率が得られるようになり、
最小電離粒子の飛跡が確実に取得できる様になりました。
また、大面積化に向けて大型アンガー型NaIシンチレータを導入しています。
R. Orito+, IEEE NSS Conference Record 2005, 443
2005年春
ガラスでできているキャピラリープレートの代わりに
ガス飛跡検出器に前段増幅器としてGEM (gas electron multiplier)を導入することによって、
より扱いやすい検出器となりました。
一方、シンチレータはGSOピクセルシンチレータアレイに変更し、
側面にも設置するようになりました。
これにより、シンチレータがTPCを覆う立体角が大きく増加すると共に、
アンガー型のカメラでは避けられない空間的に不感な領域を削除できたため、
実質的に検出効率が改善しました。
2005年秋
SMILE-Iの気球実験に向けた読み出し回路の刷新を図った検証機です。
これまで1.8 m高の19インチラックを埋め尽くしていた読み出し回路系を
FPGAを用いコンパクトにして1/4程度に収めました。
この回路系刷新が成功したことにより、SMILE-I気球実験が可能となりました。
2006年 SMILE-I気球実験
2008年
SMILE-Iの成功を受けて、検出有効面積の拡大を図った検証機です。
30×30×30 cm3のガス飛跡検出器と
その面積に合わせたGSOピクセルシンチレータアレイを用いて、大面積化を実現しています。
K. Ueno+, IEEE NSS/MIC Conference Record 2008, 3470
K. Ueno+, JINST, 7 (2012), C01088
2009年
ETCCは、電子・陽電子対生成をとらえることで
10 MeV以上のガンマ線に対しても感度を持つことが可能です。
10×10×15 cm3のガス飛跡検出器を用いて作られたのがこの原理検証機です。
電子・陽電子の飛跡からガンマ線の到来方向を得ることで、
10 MeV・20 MeVのガンマ線イメージの取得に成功しました。
K. Ueno+, NIM A, 628, 158
2012年
SMILE-II実験に向け、読み出し回路の刷新を図った検証機です。
回路系の軽量化・省電力化・省スペース化を行い、
SMILE-Iと同程度の電力・重量で、3倍もの数の信号を取り扱えるようになりました。
またデータ収集方法も大きく更新し、電子飛跡がより鮮明に取得できるようになりました。
検出器の面積が増えた分、データ量も増加していますが、
このデータ収集システムの更新により収集速度も改善されています。
T. Mizumoto+, IEEE NSS/MIC/RTSD Conference Record 2013
2013年 SMILE-IIシステム
2016年
検出器システムの不感時間を削減すべく、トリガー生成方法を検証すべく製作した実証機です。
従来は、シンチレータの信号を受けてからガス飛跡検出器の信号を待ち受ける方式でしたが
一定時間内にシンチレータと飛跡検出器の両方に信号があると判断したときのみ
検出器を不感にしてデータを回収する、というコモンストップ方式を採用しています。
これによりデータ回収に伴う不感時間の大幅な改善がなされました。
K. Yoshikawa+, IEEE NSS/MIC/RTSD Conference Record 2017