µ-PICの性能
micro pixel chamber (μ-PIC)は、比例計数管を輪切りにしたような構造の電極が、400 μmの間隔で並んでいます。
陽極の直径は50〜60 μmと非常に微細な構造となっており、
高電圧を印可することで、陽極周囲に高い電場を形成し、ガス増幅を起こします。
この微細構造をもつ電極はプリント基板技術によって作られており、
大面積を均一な品質で作成可能です。
現在、10×10 cm2〜30×30 cm2のμ-PICが稼働しており、
単独で10000近いガス増幅率が得られています。
これは、微細な電極構造をもつガス検出器としては非常に大きいものです。
増幅率6500程度では数ヶ月以上の連続動作も確認されており、
ガス増幅率の場所依存性も10×10 cm2で5%程度に抑えられています。
X線検出器としてのμ-PIC
μ-PICに数mm程度のガスパッケージを取り付けることで、
X線2次元イメージング検出器としての動作も可能です。
μ-PICのガス増幅率の高い均一性から、10×10 cm2の領域で、
エネルギー分解能 30% (5.9 keV)という結果になっています。
電極間隔の細かさから120 μmという高い空間分解能も実現し、
クリアなX線イメージも取得されています。
また、ガス増幅は各ピクセルで起きるため、
高計数率の測定時でも飽和しにくいという特徴もあります。
Garfileld++によるシミュレーション
近年、ガス検出器のシミュレーションツールの開発も発達してきています。
我々の研究室で開発しているμ-PICも、このようなシミュレーションツールGarfield++を用いて、
現在のμ-PICの深い理解をすると共に新たな電極構造を検討しています。
現在のμ-PICの電極構造をシミュレーション上で再現すると、
その電場構造は予想通り陽極近傍で強くなっています。
ガス増幅率を計算するとその陽極電圧依存性は、実験値と非常によい一致が得られました。
また、種電子1個に対するガス増幅のシミュレーションから、
μ-PICの信号波形を計算し、電子飛跡検出型コンプトンカメラのシミュレーションに反映させています。